【整備】CANON LENS FD 50mm F1.8 S.C. 後期型 (Serial No. 55015)

今回はお客様からお預かりした CANON LENS FD 50mm F1.8 S.C. 後期型 を整備しました。

■外観

■機構

  • フォーカス調整機構:問題なし
  • 絞り羽根調整機構 :整備実施(絞り羽根に油染みがあり整備を行いました)
  • レンズフィルタ装着:問題なし
  • 自動絞り機構   :問題なし

■光学系

  • カビ・ちり・汚れ:除去済み(前玉にカビ、後玉に一部カビあり)
  • くもり     :後玉に一部くもりあり
  • キズ      :なし
  • バルサム切れ  :なし   
  • コーティング劣化:なし

※「なし」の項目について微細なものの見落としがある可能性がありますが、ご了承ください。
※上記詳細は以下の整備記録をご確認ください。
※上記状況について実写テストを行いました。実写テストにおいては撮影への明確な影響は見られませんでした。

まずはレンズの状態を確認します。前玉側、後玉側に広範囲にカビが見受けられます。また絞り羽根に油染みがあります。
まずは絞り羽根の整備を行います。前玉側から絞り羽根にアクセスするため、ゴム治具で化粧リングをはずし、フィルタ枠を固定している3本のネジをはずしてフィルタ枠を外した後に前玉群レンズユニットを取り出します(レンズユニットは鏡筒を逆さにすると取り出せます)。
絞り羽根にクリーナー剤を塗布し、浮き出てきた油分を綿棒で丹念に拭き取ります。上記を何度か繰り返し、油分の除去を行いました。
絞り羽根の動作も問題ありません。
続いて前玉側のレンズを整備します。前玉1枚目のレンズの裏側にカビの塊が見えます。後期型と呼ばれこのレンズは前期型に比べて様々な点でコストダウンが図られています(=後から分解することを想定していない作りになっています)。前玉群レンズユニットは金属製ではなくプラスチック製で、かつレンズを組み込んだプラスチックの筒を接着剤で貼り合わせた構造になっているため分解が出来ず、前玉の裏側に付着しているカビを取り除くことができませんでした。
レンズユニットの分解が出来ないため前玉1枚目の表面と2枚目の裏面をレンズクリーナーとクロスで磨いたところ、多くの汚れを取り除くことができました。2枚のレンズの間にあるカビを取り除くことはできませんでしたが、全体としてはかなり綺麗な状態にすることができました。
続いて後玉側の整備を行います。後玉側のレンズの状態を確認します。一面にカビと汚れが付着しています。
後玉側の整備に先立ち前玉のレンズユニットを元に戻しておきます。
後玉側のレンズを取り出すためにマウント部を取り外す必要があります。絞り羽根調整ダイヤルを最大絞りのF16に合わせた状態でマウント部を固定している3本のビスを抜き、マウント部を取り外すと後玉側のレンズユニットにアクセスできます。レンズユニットに被さっているカバーを取り外します。このカバーは柔らかいプラスチック素材で出来ているのでカバーの下側に針金などを差し込んで手前に引っ張る形でカバーを固定しているツメをはずし、上方向にカバー全体をずらす形で抜き取ります。
後玉側のレンズを取り出します。レンズは2枚構成です。
※レンズの右側にあるシルバーのリングは自動絞り機構と連動して絞りを制御するリングです。
マウント側のレンズです。カビと汚れが付着しています。レンズクリーナーとクロスで丹念に磨き、レンズ周辺部に一部くもりが残りましたが綺麗にすることができました。レンズ周辺部くもりの撮影への影響は実写テストで確認します。
絞り羽根側のレンズです。こちらも大量のカビと汚れが付着しています。レンズクリーナーとクロスで磨き、一部取り切れないカビが残りましたが綺麗な状態にすることができました。
絞り羽根側のレンズは2枚のレンズを貼り合わせた構造になっており、取り切れないカビは2枚のレンズの隙間に入り込んでしまっていたため、残念ながら取り除く事が出来ませんでした。
後玉側のレンズを戻す前に、自動絞り制御リングを取り付けます。後玉群レンズユニットの底部にある3つの突起部に合わせて自動絞り制御リングをはめ込みますが、この際に赤丸部分の絞り制御レバーが自動絞り制御リングに接する状態になるよう、爪楊枝等を使って絞り制御レバーを右方向に回転させておきます。その状態で自動絞り制御リングを反時計方向に回転させ、自動絞り制御リングの山形のスロープ部で絞り制御レバーをコントロールできる位置まで回転させます。
後玉群レンズユニット内を清掃し、レンズを組み込みます。
マウント部を清掃し、レンズ本体に取り付けます。この際に絞りレバーをマニュアル絞りの位置に固定しておくと取り付けし易くなります。
最後にレンズ外装を清掃してレンズの整備は終了です。
整備済みのレンズについて機構面のテストを行いました。フォーカス調整ダイヤルはトルク感も適度でスムースに動きます。整備を施した絞り羽根もマニュアル絞り、プリセット絞りともに問題無く動作しています。フィルタ装着も問題ありません。

レンズ整備結果について実写テストを行いました。

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